Doctor's Doctor、すでに使い古されている言葉です。
しかしながら新たな輝きを持ってこの時代を迎えています。
私が研修を始めた四半世紀前、病理ブロック(ホルマリンで固定しパラフィンで包埋した材料で現在FFPEといわれています)はHE染色と特殊染色、そして少しの免疫染色を行う程度の試料でしかありませんでした。
当時はゲノム医療の萌芽があり、病理診断は廃れゆく領域と言われていました。
それでもHE染色が語る深淵な世界に魅了され私は病理診断の道に進みました。
私は2006年に米国のがんセンターに留学することになるのですが、そこでは肺癌のFFPEからEGFR遺伝子変異の検索が病理部で始まっており、病理診断報告書と分子病理診断報告書が分けて発行されていました。
恩師が「これがこれからの病理診断の標準となる」と言っておられたのが印象的です。
帰国後5年ほどして日本でもコンパニオン診断として導入されましたが、HE染色を用いた診断から遺伝子検査へ流れをマネージメントする新たな領域がDoctor’s Doctorとしての病理医の仕事となっているのです。
当講座では、先代大林千穂教授が遺伝子解析ユニットを作られ、遺伝子検査を含めた多角的な病理診断を診療および研究面で進められる環境が整っています。
さらに昨今医療現場へのAIの導入が進んでいますが、私自身はAIの病理診断領域における将来のあるべき姿を探ってきました。
「AIが医師の仕事を奪う」といったことが叫ばれていますが、私の経験ではむしろ病理診断の新しい世界が開かれているのを感じています。
新しい時代の“Doctor’s Doctor”の形作り、是非一緒に作り上げてみませんか。